中小企業省力化投資補助金とは? 2024年3月公募開始が決定!

2023年11月に令和5年度補正予算の概要が発表され、新たに「中小企業省力化投資補助金」が新設され、2024年度の注目補助金となっています。

中小企業省力化投資補助金とはどのような補助金でしょう?創設された背景は?予算額は?採択率は?採択のコツは?申請時の注意点は?対象となる設備投資は?公募時期・期間・頻度、どのようなスケジュール?など、3月中旬時点で明かになっている情報を中小企業診断士の高橋が詳しく解説します。公募開始までに新しい情報が公開される見込みですので、活用を検討する際は、これから発表になる公募要領と最新情報をよく確認したうえで、専門家のサポートを受けることがベストです。

1.中小企業省力化投資補助金の目的と概要

中小企業省力化投資補助事業は、経済産業省から発表された令和5年度補正予算の概要に組み込まれた省力化・省人化に関する中小企業向けの補助金制度です。中小企業や個人事業主の売上拡大や生産性向上を後押し、政府が力を入れている注目度の高い大規模な施策です。人手不足に直面している多くの中小企業や個人事業主に対して、省力化投資を支援することで付加価値や生産性向上を促進し、賃上げを達成することが本補助金の目的です。

新型コロナウイルスの感染拡大から社会全体が大きく変化しています。各業界ともにコロナの影響は弱まったと言われていますが、物価高騰やエネルギー高騰、労働力不足などに課題を抱える中小企業や個人事業主に対して、補助金などによる資金面での支援は非常に価値があると言えます。

中小企業省力化投資補助金では、IoTやロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業や個人事業主が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進します。申請する事業者側が自由に投資製品を選ぶのではなく、事前に投資製品が登録されたカタログの中から選ぶ点が大きな特徴で、IT導入補助金に近い制度設計になるものと見込まれます。

2.中小企業省力化投資補助金新設の背景や予算規模

コロナ禍の補助金として有名なのが、前例のない大型予算で実施された事業再構築補助金です。コロナの影響で需要や売上回復が期待しにくい中、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業や個人事業主の事業再構築を支援する補助金です。ところがコロナが5類に移行したこと、外部有識者を交えた行政事業レビューで事業再構築補助金の停止や再編が示唆されたことを踏まえると、役目を終えたとも考えられます

その代わり、人口減少や少子高齢化、改正労働基準法の影響で2024年4月以降は時間外労働の上限規制が厳しくなる中で、人手不足や労働力不足を抜本的に解決する必要が生じており、政府は中小企業省力化投資補助金の実施を決定しました。令和5年度補正予算の概要によると、中小企業省力化投資補助事業の予算は1,000億円ですが、事業再構築補助金に割り当てられていた残りの予算を組み込んで運用した場合は、総額5,000億円になると推測され、事業再構築補助金に次ぐ大きな予算規模になります。

3.中小企業省力化投資補助金の補助上限額と補助率

現時点で発表になっているのは省力化投資補助枠(カタログ型)です。従業員数によって受け取れる補助上限額は異なり、補助率は従業員数や賃上げ目標の達成有無にかかわらず、すべてのケースで2分の1です。従業員数ごとの補助上限額は次の通りです。
・従業員数5名以下
 200万円(300万円)
・従業員数6~20名
 500万円(750万円)
・従業員数21名以上
 1,000万円(1,500万円)
※賃上げ要件を達成した場合は()内の金額に引き上げ

4.製品カタログに掲載される具体的な機械設備やツールの予測

現時点では、具体的な対象経費になる機械設備やツールは発表されていませんが、IoTやロボット等の人手不足解消に効果があり、補助金の対象とする商品を予めカタログに掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある支援措置を新たに実施すると記載があります。あとから追加発表された中小機構の資料に掲載されているカタログ掲載機器のイメージを紹介しておきますので参考にしてください。
・無人搬送ロボット
・検品・仕分けシステム
・無人監視システム
・キャッシュレス型自動券売機
※あくまでもイメージや予測のため、製品カタログにすべて掲載されるとは限りません。申請する場合はご自身で最新の情報を入手してください。

★追加情報
公式の中小企業省力化投資補助金サイトに対象カテゴリーが発表されましたが、3月13日に更新された一覧では4点のみの登録に留まっています。
<券売機>
対象業種:飲食サービス業
対象業務領域:注文受付、請求・支払、顧客対応
券売機とは注文受付、券類の発行、支払・決済業務を自動的に行う機器と定義する。
<自動精算機>
対象業種:飲食サービス業、小売業
対象業務領域:注文受付、請求・支払、顧客対応
自動精算機は、主に商品販売時及びサービス提供時における支払・精算対応又はつり銭等現金の受け渡しを自動的に行う機器と定義する。
<自動チェックイン機>
対象業種:宿泊業
対象業務領域:受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応
自動チェックイン機は次の機能を有する製品と定義する。予約管理機能/チェックイン機能/精算・会計機能、上記機能に加え、省力化に資する観点から次の機能を具備するものが望ましい。チェックアウト機能/カードキー発行機能
<スチームコンベクションオーブン>
対象業種:宿泊業、飲食サービス業、小売業
対象業務領域:保管・在庫管理、調理
スチームコンベクションオーブンとは、コンベクションオーブン(ファンにより熱風を強制対流させるオーブン)に、蒸気発生装置を取り付け、熱風、水蒸気、熱風+水蒸気を利用し、焼く、蒸す、煮る、炊く、炒めるなど多様な加熱調理を1台で担うことができる調理機器のこと。
また、プログラム機能を持ち、料理、食材ごとの加熱時間、温度等を登録でき、使用する人間を問わず調理品質を保つことができる。

5.中小企業省力化投資補助金のスケジュール

2024年1月に事務局の公募がありました。事務局の公募要領(補助金を申請する公募要領とは異なる)によると、2026年(令和8年)9月末まで公募回数は15回程度(公募頻度2ヶ月に1回)が予定されています。約2年半にわたりロングランで実施され、補助額は最大1,500万です。また採択予定件数は12万件程度と発表されています。大型補助金として注目された事業再構築補助金がこれまで10万件に満たないことを捉えると、今回の省力化投資補助金が幅広い事業者を支援するための制度であることがうかがえます。

現在、工業会等の業界団体(製品を生産・販売する製品メーカー等ではない)を対象者とし、カタログに掲載する製品の種類(製品カテゴリ)の意見照合を行っているところです。製品カテゴリ登録指針に基づき、中小企業庁に対して、登録したい製品カテゴリの意見を提出し、当該意見に対して回答を行うスキームです。

2024年3月中に製品カタログの情報や専用サイトが発表され、3月末までに公募開始される予定となっています。個人的には、予算の都合上、3月末までに公募開始されたとしても申込開始は4月中旬頃になるのではないかと思っています。

詳細は、公式の中小企業省力化投資補助金サイトでご確認ください。

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